盛圭太(現代美術作家)後編

盛圭太さんインタビュー第2弾。学生時代のことやフランスについてなどおうかがいしました。

Art Age (以下AA): さて、フランスについてのお話を少し聞かせて下さい。
フランスではずっとパリに住んでいるのですか。
盛:学生の頃は郊外に住んでいて、ボザール終わってパリ第8大学に入学し
てからパリに移りました。
AA : 日本でもアートを勉強したのですか。
盛 :多摩美にいて、その時は彫刻をやっていました。
AA : その後なぜフランスに?
:当時はインターネットがなくて、世界で起きていることは雑誌で調べて
いたんだよね。その中で、フランス語のアート誌がおもしろかった。もともと
本を読むのが好きで、フランス語で書かれている文学とかよく読んでた。
今思うとベルギーやマグレブの作家で、フランス人作家ではなかったけれど。
AA : ボザールの後、パリ第8大学に通ったのですね。
盛:パリ第8大学ではディプロムを取得したけど、ボザールではアートって
学ぶものじゃないなって思ってた。学校は好きで、同世代の学生と話すのも
好きだったけど、多摩美にいた時は「もしかしたら外ではこんなことがある
んじゃないか」っていうあこがれを持っていて、「ああやっぱりこうだった
か」っていうのがボザール。だからディプロム審査まではやらず、むしろ理
論に興味があって、パリ第8大学へ行った。マスターまでディプロムとって、
そこで学生の区切りがついた。卒業して、Maison des Artists に登録して、や
っとアーティストだな、って実感があった。
AA : 卒業後にブランクは?
:それはなくて、そもそも学生時代がブランク。当時自分に言い聞かせて
いたのは、この時間は弓をひいている時間だ、ってこと。多摩美を卒業後、
僕は海外を選択したけど、日本でやっていくことを選んだ人達がどうやって
アートシーンに入っていくのか、海外からも見えていた。それで、今は学生
でいる時期だ、と思った。学生時代は、飛び出すための燃料を補給する時期
だから。作品を発表する上でタイミングはとても重要だと考えていて、Bug
Report を発表するのはパリ第8大学を卒業してからと決めていた。他にもこ
れから出したい、でも今じゃない、というプロジェクトはたくさんあるし、
僕にとって順番はすごく重要。
AA : Bug Report はパリ第8大学にいたころから構想があったのですか。
:そう。多摩美の卒業制作がBug Report。多摩美に諸材料科という、コン
テンポラリーアートを標榜しているような学科があった。世界的な目線でア
ートを見たいと思っていたけど、僕が学生の頃はそれができる学科は諸材料
科しかなかったから、そこへ行きたかった。 Bug Report が卒業制作だったけ
ど、何をやっていいのか、イメージがどうして出てくるのか、わからなかっ
た。今になってやっとわかったのは、わからないということがわかったとい
うこと。だから、当時は出てくるものに圧倒的な強度があって、おもしろい
ねっていわれても自分でついていけなかった。それを10年間寝かせていた。
その後、2011年に地震があって、パリ第8大学で理論形成に特化して、
いろいろ思い返す時間があって、その時にやっとBug Report がBug Report
になった気がする。大学では絶対に創ろうとしなかったし、これは卒業して
から、職業として作るものだと思っていた。
AA : そこまで遠くを見据えていたのですね。
:職業としてのアーティストを意識していた。ボザールやパリ第8大学へ
行ったのは、まだアーティストと名乗るのは早いと思っていたからだと思う。


学生時代は、飛び出すための燃料を補給する時期

AA : 盛さんの経歴を見ると、遠くを見据えて着実に進んでいる印象を受けま
す。
:フランスでは、アーティストとして普通に生活している人に会うことが
できる。でも、日本ではそういう機会が少なかった。僕は、かっこさえつけ
なければ、アートでご飯を食べて行けると思っている。アートは厳しい、と
は全然思わない。100人中99人は厳しいって言うけど、絶対違うと思っ
て無視していた。これからの社会を見据えると、むしろ重宝される職業にな
ると思う。悔しいのは、時々アーティスト自身が難しいと言ってしまうこと。
自分で自分の足を引っ張っている感じがする。僕は展覧会の話しがあれば、
なるべく参加するようにしていて、今でこそ時間の制約はあるけど、極力選
ばないようにしている。アートは何が起きるか分からないから、絶対無理っ
て思った場所で展示した時にすごく良い感触を得たりすることもある。想像
もできない場所に足を踏み込んで行くことは、大切だと思う。
AA : 盛さんがとても良いスパイラルを作っているのを感じます。ところで選
ばないようにしているとおっしゃいましたが、仕事を受ける上で採算性は考
えるのですか。
:それはあまり聞かれない質問だけど、切実だし重要な問題。まず、作品
の値段はギャラリーがつける。そしてワークショップは、ほぼボランティア。
社会的コンテクストがあって、金銭の報酬はないけれど、社会の中のアート
に重きをおいているところには、足を入れていきたいと思う。ポリシーとし
て生産活動の10%は、ボランティアやワークショップをやっていこうと決
めている。社会参加という意味で、例えば今は、Quartier Prioritaire に指定
されている18区でワークショップをしている。文化的な環境が少ない場所
にいる子供達とやることには、すごく意味があるし、そういうオファーがあ
れば是非参加したい。アートから遠い場所ほど、モチベーションが上がる。
AA : 話しが少し変わりますが、盛さんの壁に制作するインスタレーションは、
どう販売するのですか。
:展覧会が終わったら外して、紙の作品は売るけど、壁に制作する場合は
権利販売。僕が動いて作るよ、みたいな。
AA : でも、場所が変わると同じものは制作できないですよね。それを前提の
上ですか。
:だからライセンス。何がでてくるかわからないよ、っていう。エスキス
もないし、CG もないし、ゼロ(笑)
AA : 信用商売なんですね(笑)
:そう(笑)それがすごい気持ちいいし、人と有機的な仕事ができる。僕
が死んだらもう作れないという意味で、いいな、と。
AA : 死ぬ前にどこかに一つ残すというのは、どうでしょう。
:いいね、アフリカの洞窟とかね(笑)。アートって永劫的なものではな
く、人工的な歴史だよね。その時代であったりなかったり、文化的形態によ
って現れたり、ドッキングしたり。つまり今あるものは数百年後にあるとは
限らない。それを知る必要がある。アートは今にしかないものだよね。
AA : アーティストのあり方も変化していいですよね。
:そうなると思うよ。テクノロジーの影響で、アートのあり方やアーティ
ストの作り方やスタンスも変わるだろうし。その中で「今だけ」ということ
に重きが置かれて行くというのは、ずっと予想されてきたことだし。アート
が民主化していくと思う。アーティストの数も増えていくだろう、その時代
によってアートの違う変化をするだろう。中身のない容器というか、中身が
変わるだけで、容器自体もなくなることもあるかもしれないし。
AA : なるほど。本日はいろいろお話を聞かせて頂いて、ありがとうございま
した。

Courtesy the artist and Galerie Catherine Putman, Paris

Bug report (Corpus), 2018
Fil de coton et fil de soie sur mur, vue de l’exposition «DOMANI»
The National Art Center, Tokyo
© ADAGP Keita Mori
Courtesy the artist and Galerie Catherine Putman, Paris

開催中の展示

グループ展
Itinéraires Graphiques du Pays de Lorient
Artistic direction : Frédéric Malette
12 Oct – 16 Dec 2018
La Rotonde, Lanester (FR)

グループ展
(MO)TION
27 Oct – 09 Dec 2018
ACAC – Aomori Contemporary Art Centre, Aomori (JP)

レジデンス 
ACAC-Artist in Residence Program 2018/ autumn
Oct, Nov, Dec
ACAC – Aomori Contemporary Art Centre, Aomori (JP)

今後の予定

グループ展 
Weniger ist mehr – less is more
17 – 22 Dec 2018
Galerie du CROUS, Paris (FR)

レジデンス 
IF – Irrésistible Fraternité
Jan, Feb 2019
.748, Limoges (FR)

盛圭太ウェブサイトはこちら

作品画像
Bug report (Terminal), 2017
Fil de coton et fil de soie Vêtements détissés
Vue de l’exposition «Strings»,
Curator : Gaël Charbau, Drawing Lab, Paris



© ADAGP Keita Mori 
Courtesy the artist and Galerie Catherine Putman, Paris



コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

%s と連携中