盛圭太(現代美術作家)前編

フランスで活動する日本人アーティストとのインタビュー第4弾。今回のアーティストは、盛圭太さんです。

2016年12月にモンペリエでの個展で盛さんの作品との出会って以来、ずっとお会いしたいと思っていたところ、今回やっとパリでじっくりとお話を伺うことができました。その内容を、前後編に分けてお届けします。


 

Art Age (以下AA): まずは、作品についての質問です。Bug Reportというシリーズのデッサンは、建築的要素をテーマとして意識しながら始めたのですか。

盛:Bug Reportは糸でできていて、その特性から素材に密着して出力されている作品です。糸は人間が作り出したすごく古い素材。例えば、僕らが今着ている服を住居と考えると糸はその建材で、糸を引いた直線から生まれる幾何学の集積が服という構造物になっていく。だから僕は糸を構造物と考えていて、そこから繰り出されるイメージはどうしても建築的になってしまうのであって、初めから建築的なものを作ろうと考えているわけではないです。

AA : 絹と綿以外の糸を使うことはありますか。

盛:ある。化学繊維もあるし、服をほどいて作った時はどうしても入ってくる。

AA : 壁に直接糸を貼ろうと思った理由は。

盛:僕にとって重要なのは、これらが作った後に壊されるイメージであって、後に残るものではない、ということ。Ephémère(訳:はかない)というか、 壊されることを想定して創作する点が、大切。Bug Reportはずっと壁に制作していた作品で、現れたイメージは会期が終わるとなくなる、というプロトコルで制作したもので、紙で作り始めたのは最近のこと。

モノが残りやすい時代において、残らないというアンビバレントがおもしろいし、人工知能が発達してイメージが人工的に作られる事象は、これからも増えて行く。その反面、手で作り出されたものをいたわる動きも出てくる。僕はそれへの投資だと思っている。「反」ではないけど、真逆のベクトルが確保されていくんじゃないかな。

昨年あやとりをする手の映像作品を撮った時、昔からあるあやとりで作られる幾何学模様を、当時の人はどう見ていたのだろうと思った。現代ならInformatique(訳:情報科学)なものに結びつけるけど、糸を引っ張って出来る線自体は糸が発明された頃からある。自然界にはない直線や幾何学を見た時に、かつての人は何を考えたのだろう。そんな風に、僕は新しいことをやっているのではなく、昔の人も見ていた風景を作っている。

Strings, 2017 Video en boucle, 12minutes Réalisation: Alexander Murphy, Images: Sebastian Cantillo © ADAGP Keita Mori Courtesy the artist and Galerie Catherine Putman, Paris

AA : 展覧会でインスタレーションを制作する時は、いろいろ準備するのですか。それとも即興ですか。

盛:いつも即興。作品をつくる行程やプロットがない。作品制作にあたって、素直に思っていることに近いと思う。準備ってどこまでもさかのぼることができる。僕は準備をあまり信じていなくて、Bug Reportは準備をした時点で完成になるし、完成したものが準備ともいえる。つまりあれは絶対に完成しないし、完成は時間や空間の制約で必然的に訪れてしまうものであって、自分が決めるものではない。完成しているものは世界にはないし。完成と準備の間にある、あきらめみたいなもので終わっている、というか(笑)。

 

適切な答えを出すことより、的確な疑問を投げるほうが大切

 

AA : 意図的な空間を作り上げよう、ということがゴールではないのですね。

盛:僕は、「それは何」にあたる、「何」に疑心暗鬼で、存在理由についても懐疑的。適切な答えを出すことより、的確な疑問を投げるほうが大切だと考えている。疑問とはつまり、できるだけ多くの答えの可能性を与えること。例えば3歳の子供が「僕にはこれに見える」「私はあれに見える」という感覚。可能性が答えになっているというか。僕の場合、いろいろ考えたけどわからなくて、そのことを受け入れるのに時間がかかった。美術史を知れば知るほど、理由とか根拠とか、そのドグマから抜けだせなくなった。そして、これはアーティストの仕事じゃないな、と考えるようになった。もちろん、それを仕事にしている人はリスペクトしているけど。

僕の場合は「わからない」ということが、作品を大きく見たり、感じたりする開口部になっている。だから、簡単に入って、簡単に出て欲しいと思う。そのためにオリジナルは設定しない。展覧会でも、作り出す直前まで何になるかわからないと言い続けるし、誘ってくれる人たちは「こんなに用意しないアーティストはいない」と思っているはず。それでも、少しずつ理解を示してくれるようになったけど。展覧会の時は準備という制約を意識的に外したり、相手の意識を変えさせようとしたりしているかもしれない。

AA : 準備をしないで制作を始めて、糸が足りなくなった経験はありますか。

盛:ある(笑)。いっぱいある。

AA : それを踏まえた上での制作が、盛さん流のアートに対する向き合い方ですか。

盛:いかなる環境にも対応できるようなスタンスではいる。

AA : 作品の中で、糸が違う理由は使っていたものがなくなったから、ということもありえるのですか。

盛:もしかしたら、あるかも(笑)。アートの真実ってそこにあると思うんだよね(笑)美術館とかでそういう話をアーティストから聞きたいよね。嘘ついてない気がする。

AA : ボザールの発表では言えないですよね。

盛:僕が審査員だったらFélicitation Juryあげるね(笑)Wikipedia的なdiscours(訳:スピーチ)よりは、そういうことを聞きたくなる。アーティストとして切実か、その人の言葉かどうか、っていうのには敏感で、これってどっかで読んだのかというコメントより、その人の切実な声のほうが好感持てるし良い作品を作るよね。

AA : 作品について語ることについては、どう考えていますか。

盛:重要だと思っているから、すごく語る。例えば、今話している時、子供を前にした時、専門家を前にした時の言葉やトーンは変わると思う。僕にとって優れた作品の基準は、できるだけ多くの開口部というか兆候、indice(訳:示唆、手がかり)があるかどうか。どれだけ多くの人差し指を持っているか、だと思う。その多さは、作品についてどのように語ることができるか、にも通じる。

 

わかることはわかる、わからないことはわからない、ただそれだけ。

 

AA : 考えが言語としてまとまっていないと、説明するのは難しいですよね。

盛:大切なのは、確信的であること。わかることはわかる、わからないことはわからない、ただそれだけ。僕は出てくるイメージを信じているけれど、そこから出てきたものが何か自分でもわからない。だから、人にもわからない。だからこそ、多くの話しができるんじゃないかと思う。

AA : アーティストの人間性が、作品に現れると思いますか。

盛:思う。だからつまらない作品はないと思う。作品は全部いいよね(笑)。よくないものを、見たことない。

以下後編に続く

作品画像:Bug report (Flux), 2017 (détail), Fil de coton et fil de soie Vêtements détissés
Vue de l’exposition «Strings», Curator : Gaël Charbau, Drawing Lab, Paris
© ADAGP Keita Mori Courtesy the artist and Galerie Catherine Putman, Paris


 

開催中の展覧会

【グループ展】

Suites résidentielles
2018年9月14日 – 11月3日
Artothèque de Caen, Caen (フランス)

今後開催予定の展覧会

【グループ展】

2ANGLES FÊTE SES 15ANS
2018年9月21、22日
2angles, Flers (フランス)

RÉCITS DE SQUARES
Commissaire : Pauline Lisowski
2018年9月29日〜11月10日
Le 87, Paris (フランス)

Itinéraires Graphiques du Pays de Lorient
Direction artistique : Frédéric Malette
2018年10月12日〜12月16日
La Rotonde, Lanester (フランス)

(MO)TION
2018年10月27日〜12月9日
国際芸術センター青森、青森県(日本)

盛圭太ウェブサイト

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