ザ・スクエア 思いやりの聖域 The Square

欧州の現代アートに関する痛烈でユーモアある風刺は、アートが好きな人必見。
カンヌ国際映画祭パルムドール受賞。


 

ストックホルムの美術館でチーフキュレーターをしているクリスティアン。新しい展示のために準備を進める中で、仕事でもプライベートでも次々に問題が発生し、公私からみあって下降線をたどってゆく。

 

スウェーデン人監督リューベン・オストルンドの、長編映画としては5本目となる『ザ・スクエア 思いやりの聖域』は、2017年のカンヌ国際映画祭パルムドール(最高賞)を受賞した話題作。フランスではずいぶん前に公開されています。また、オストルンド監督は『 フレンチアルプスで起きたこと (Force Majeure)』で、2014年カンヌ国際映画祭のある視点部門の審査員賞を獲得しています。

ヨーロッパではすでに注目されていたオストルンド監督の最新作、『ザ・スクエア 思いやりの聖域』をThe Art Ageが読者におすすめしたい理由は、この映画がヨーロッパにおける現代アート界の現状を痛烈かつユーモアたっぷりに風刺している点にあります。

タイトルの『スクエア』はカジミール・マレーヴィチを代表するロシアの抽象絵画ムーブメント、 シュプレマティスムから現代まで続くアートにおける正方形を連想させます。

そして新しい展覧会で展示される作品は、ミニマルな正方形。そのコンセプトは「スクエアの中では、すべての人が平等な義務と権利を有する」。これが本作品の中で最大の皮肉であり、そこに疑問を投げかけるのが本作品の主旨ともいえるのではないでしょうか。

例えば、現代アート界の「わかる人にしかわからない、わかる人だけに通じればいい」という側面は、平等というより排他的。それをうまく見せているのが、冒頭のクリスティアンがインタビューに答えるシーンです。

彼が言うことは、様々なレビューやインタビューで聞いたことがあるような同じ単語の羅列で、内容はわかるようでさっぱりわからない。

これは多くの人が現代アートに触れたときに経験しているのでは?もちろん全てがそうだというわけではなく、むしろフランスでは理論的に作品を説明することが求められますが、中にはさっぱりわけがわからない解説や批評も存在します。それが「現代アートはよくわからない」というイメージを作り出しているのかもしれません。

また、ミニマルといえばアメリカのミニマリズムということなのか、アメリカ人アーティストが登場します。そして彼さえもが、笑いの種になってしまうのです。ヨーロッパを席巻し今でも大きな影響を与えているミニマリズムやランドアートですが、ここではアメリカとヨーロッパのLove & Hateの関係が見えるような気がします。

最後に、極めつけはポスターにもなっているディナーでのパフォーマンス。

犬のパフォーマンスで現代アート界では有名な、Oleg Kulikを揶揄しているとしか思えません。動物になりきるパフォーマンスを鑑賞するゲストですが、彼らにとってそれはアートというより余興。

そしてパフォーマンス(アート)の本質を理解せず、あくまで人間が演じているものとして、想定内での行動を期待します。ところが予想に反してパフォーマンスが人間の常識範囲を越えた時、ヒステリーを起こし理性を失って、招待客は最も動物的な行動に出るのです。

アートの理解者であるべき美術館の支援者たちへの、なかなか手厳しい皮肉です。

このように、『ザ・スクエア 思いやりの聖域』は、アート作品、批評家、美術館など現代アートを取り巻くすべての要素を、その実態や矛盾をさらけ出しながら、ユーモアたっぷりに指摘します。

それらは見ていて笑える反面、少し心が痛みます。ここに描かれている現状は(特にヨーロッパでは)否定できないし、だからこそ現代アートを好きな人ほど否定できない事実を苦々しく思うはずです。

現代アートの風刺以外にも、この映画では現代社会における様々な問題を取り上げています。そのひとつが、表現の自由です。

新しい展覧会のプロモーションビデオを制作会社に依頼するのですが、公私ともに問題山積みのクリスティアンは、完成したビデオをよく確認せずにゴーサインを出してしまいます。そしてそのビデオが公開された途端、内容のせいでバッシングを受け、クリスティアンはさらなる窮地に立たされるのです。

表現の自由はどこまで適用されるのか。どこまで保証されるのか。アートと表現の自由について、考えさせられる一幕です。

この映画はクリスティアンの経験を通して、先進国における経済格差などの問題を次々に観客に投げかけます。そこが面白くてあきない反面、詰め込みすぎな印象は否めません。とは言うものの、2時間30分はあっという間に過ぎますし、特に現代アートに関心がある人には絶対おすすめの1本です。

 


 

作品名:ザ・スクエア 思いやりの聖域(原題:The Square)
監督:リューベン・オストルンド
出演者:クレス・バング、エリザベス・モス、ドミニク・ウェスト 他
製作: スウェーデン・ドイツ・フランス・デンマーク合作
配給:トランスフォーマー
製作年:2017
上映時間:151分

 

ザ・スクエア 思いやりの聖域 公式サイト

4月28日劇場公開

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