吉田 佐和子 ( クラリネット奏者 / 作曲家 ) 

今回のインタビューのお相手は、クラリネット奏者で作曲家でもある、吉田佐和子さん。

昨年ご主人のお仕事の都合でパリへ移住し、生活しています。

様々なジャンルの音楽に興味を持って演奏活動をされてきた吉田さんに、パリのとあるカフェでお話をおうかがいしました。


The Art Age(以下AA):吉田さんはクラシック音楽のほかに、オリジナル楽曲も作曲・演奏するとのことですが、なにか演奏スタイルのようなものはあるのでしょうか。

吉田佐和子:よく私の楽曲はクラシックでもジャズでもないと言われます。自分の音楽を「こんなスタイル」と端的に表現するのは難しいのですが、故郷が京都府の福知山市で「福知山の田舎の風景が思い浮かぶような、どこかなつかしい音楽だね」とよく言われます。

AA:日本では音大でクラシックを専攻していたのですか。

吉田佐和子:そうです。大阪音楽大学に通って、ずっと4年間クラシックだけ勉強してました。

AA:パリに来る直接的なきっかけはご自身の都合ではないですよね。何か不安はありましたか?

吉田佐和子:パリに来るまでは日本での仕事や引っ越し準備でバタバタしていて、パリでこんなことがしたい!というビジョンは全然なかったんです。でも、パリに来てから音楽との距離感が分からなくなって不安になったり、何もしたくない、という時期もありました。

AA:音楽活動の拠点が変わることについて、期待と不安のどちらが大きかったですか。

吉田佐和子:最初は正直なんの展望もありませんでした。こうしたいというよりも、まずパリに何があるかもわからなくて。不安という感情もなくて、とりあえず行ったらわかるかな、という感じでした。パリで活動をしているクラシックの演奏家は何人か知っていましたが、ジャズをしている人は全然知らなくて。どちらかというとジャズミュージシャンと交流を深めたいと思っていたんですが、最初は知り合いもいないし情報収集をするにもどう探せばいいかも分からず、とりあえずパリでのライブやコンサートに足を運んでいました。

AA:日本での演奏活動は関西中心だったのですか。

吉田佐和子:関西と関東の両方で行っていました。

AA:CDも出されていますよね。

吉田佐和子:はい。作曲をするようになってすぐにCDを出すことになって、クラリネットとギターのデュオで2枚、全て私が作曲した楽曲を収録しました。

AA:吉田さんの曲はクラリネットで演奏するための楽曲なのですか。

吉田佐和子:いえ、クラリネットでなくても演奏はできます。作曲自体はピアノでしていて、それを例えばクラリネットとギター、クラリネットとフルートとピアノあるいはギター、というように場合によってアレンジする感じです。

Sawako Yoshida
AA:パリではクラシックやジャズの演奏に触れる機会はありますか。

吉田佐和子:あります。今はクラシックのほうが積極的に行っているかもしれません。ジャズはライブハウスの予定をみて気になったら行ったり、時には日本のファンの方が今度こういうライブがあるから行った方がいいよ、とすすめてくださったり。

AA:フランスでは教会で演奏会があったり、日本ならコンサートホールで聴くような音楽がとても身近にあると思うのですが、その点についてはどうお考えですか?

吉田佐和子:確かに。私も教会と人々の距離が近いのには驚きました。前回日本に帰国したときに神社でお祓いをしてもらったのですが、それもパリに住んで教会が生活の一部になっているのをみて、影響された部分があります。いつも見守ってくださる神様がいて絶えず祈りをささげるということは、今まではあまり意識したことがなかったんですが、そういう考え方を持つのも良いな、と思うようになりました。教会は祈りの場であり、音楽を聴く場でもあり、日本の神社とは関わり方は違いますがとても興味深いです。

AA:ヨーロッパはクラシックの本場ですが、演奏する上で日本人的な感覚や感性について考えたことはありますか。

吉田佐和子:あまり考えたことはないですね。自分が演奏するときは楽曲を解釈していろいろ考えながら演奏しますが、「日本人的な感覚を使いながら演奏している」と意識することはありません。客観的に聞けば日本人とヨーロッパ人の感性の違いはあると思うし、フランス人の演奏を聴くと「これがフランス人の感じるクラシック音楽なんだ」と感性の違いを感じるんですけど。もちろん日本人的な感性というのはあると思いますが、感覚や感性は日々の生活や環境のなかで育っていくし、わたしは今までブラジル音楽やジャズ、チロル音楽などさまざまな音楽に触れてきたので、ちょっと変わった感性を持っているような気もしています。

Sawako Yoshida 2
AA:吉田さんはとても多才で、様々な分野で活躍していますよね。音楽家としては珍しいのでしょうか。

吉田佐和子:日本の一般社会では複業が当たり前になりつつありますが、音楽の世界で特に女性となると珍しいと思います。演奏はもちろん、楽器のレッスンもしますし、イベント企画、PV制作、フライヤー制作、サイト運営など本当にいろんなことをやってますね。

AA:いろんなソフトウェアを使いこなしている印象を受けます。

吉田佐和子:パソコンがとても好きなんです。最初はうまく使いこなせなくても、時間をかけて何度も試行錯誤してるとやりたいことができるようになるし、できると嬉しくて、やっているうちに病み付きになりましたね。

AA:吉田さんは全部のコンピューターソフトを使っているイメージです(笑)。

吉田佐和子:そうなんですか(笑)? 大学時代にブログを始めて、それを更新していたら読んでくれる人がいて、お客さんが来るようになって、ブログで発信するっていいな、と思ったんです。ツイッターやフェイスブックはその延長です。最近はアプリでライブのチラシを作れるのですが、それも何度かやると飽きてきて、もう少し自由に作りたいと思ったときに「じゃ、イラストレーターかな」というように、段階を経て今に至っています。動画作成やコンサートのプロデュースも、とりあえずやってみようかと。そしてひとりでできないところは助けてもらいながら続けていたら、いろいろできるようになった感じです。

AA:アーティストの中には言葉で表せないからアートで表現するという姿勢の人もいますが、吉田さんは言葉の表現も上手です。

吉田佐和子:ありがとうございます。でも、書いてると「まだまだやなあ」と思いますが。

AA:言葉での表現や発信にも興味があるのですか。

吉田佐和子:自分の言葉で思いを発信することが当たり前になりすぎて、あまり意識したことはないですけど。感じたことや考えたことって、時間が経つと忘れてしまうので、ブログやSNSで記録として残して、あとで振り返ることができたらいいかな、と思いながら言葉を綴っています。誰かのためというよりはまずは自分のために発信してますね。

結果の善し悪しは、クオリティの高いものをたくさんつくるようになってからでないと分からない

AA:最近ポンピドゥセンター(Metz)での坂本龍一さんのコンサートに行ったことをブログに書かれていますね。現代アートではサウンドインスタレーションや音と映像と彫刻をひとつのインスタレーションとして制作することも行われていますが、その分野には興味がありますか。

吉田佐和子:おもしろいなと感じたと同時に、こういうのは全然見ていなかったことに気がつきました。

AA:今後自分でもやってみたいなと思いますか。

吉田佐和子:それはわからないですけど、自分の楽曲に映像をのせたいという気持ちはあります。ポンピドゥセンターで見たような形ではないかも知れませんが、曲と映像が一緒になった音楽、というかアートはやってみたいです。結果の善し悪しは、クオリティの高いものをたくさんつくるようになってからでないと分からないと思っているので、一度やりはじめたらとことん突き詰める気がします。SNSなどでもさかんに映像が重要だと言われている中で、視覚的に訴えるのは今もこれからも大切かなと思います。パリでできたらいいですね。

AA:是非見てみたいです。パリで他に興味があることや、やってみたいことはありますか。

吉田佐和子:私の曲にパリの人にどういう反応を示すか知りたいですね。それと以前画家とコラボして私が演奏しているところを描いてもらったのですが、

AA:ショパンとドラクロワみたいですね!

吉田佐和子:(笑)日本的なエッセンスを感じる絵や書道などとのコラボに興味があります。ひとりでやるより誰かと何かをやりたいタイプで、コラボしたときの化学反応が好きです。音楽ではないジャンルの人とコラボしたいですね。

AA:吉田さんは福知山のこともよくお話されています。福知山を愛する理由と福知山の魅力とは?

吉田佐和子:よく聞かれますが、気がついたらすごく福知山のことを好きになっていて。小学校6年生くらいの時に、ある商店街を通ってなんか寂しいなと思ったんです。でもこれは大人がなんとかしてくれるだろう、と思い、そのまま、中・高・大学とクラリネットにのめりこんで過ごしていました。でも大学卒業前にまた同じ商店街を通ったら、相変わらず寂しくて「あれ、どういうことや」と。大学卒業する年齢というのは6年生の自分からみたらすごく大人に思えて、いざなってみるとそんなことはないですが、でも「ハタチになったのになんにも変わってない、じゃあ自分で何かできることをしよう」と思いました。それで卒業直前にコンサートを開催したら、お客さんがすごく来てくれて喜んでいただいた体験があって、町のために何かできるかもしれないと思ってしまった(笑)のがはじまりです。もしそのコンサートにお客さんが全然来なかったり喜んでいただけなかったら、今これほど活動していないかも知れません。大学進学と同時に福知山を離れたのですが、外からみると緑がたくさんあり、お城があり、鉄道の街として鉄道ファンが訪れる駅があり、といいことがいろいろあるのにそれをうまく外部に発信できていないのでは、と思うようになりました。外へ向けての発信も誰かがやると思っていましたが、何年か変わらなかったので自分ができる範囲で魅力を発信しようと福知山の魅力発信情報WEBマガジン『ふくてぃーやま』を立ち上げました。

自分がここまでできたら発表しようというのではなく、もがき苦しんでいるところからどんどん発信したほうがいい

AA:吉田さんは好きなことは徹底的に追求して、さらにそれを発信してシェアしようとされますよね。

吉田佐和子:そういうクセがありますね(笑)。過程を発信したほうがいいと、何かで読んだことがあるんです。成長する過程、もがきながら達成する過程というのは、みる人にとってはすごいストーリーになるから、自分がここまでできたら発表しようというのではなく、もがき苦しんでいるところからどんどん発信したほうがいいと書いてあって、「あ、そうか。」と。この時点の情報も誰かのためになるんかな、と思ってどんどん発信しています。

AA:吉田さんのブログにはためになる情報がたくさんありますが、本はかなり読むのですか。

吉田佐和子:そうですね、ビジネス本にはまったこともあります。その頃はブランディングやビジネス本を読みあさっていました。

Sawako Yoshida 3
AA:「パリに留学したいけれど、友だちもいないし学校情報もないしどうしよう」と、もし学生からブログに相談がきたら、なんと言いますか。

吉田佐和子:是非おいで、と言いますね。やっぱり来ないとわからない、パリに住まないとわからないことが沢山あります。あとは、その人が欲しい情報を持っていそうな日本人を紹介するかな。私が知っていることはもちろんいろいろ教えますが、まだわたしも知らないことも多いので。でも本当にパリに留学してる人には優しくしたいです。パリで生活するだけでとても大変だと思うので、わたしがお話できることはなんでも伝えたいですね。

AA:吉田さん自身は移住前にパリに来たことがあったのですか?

吉田佐和子:はい。2015年にクラシック音楽を学ぶためにパリに来て、志望校の先生にレッスンを受けました。でもそこでジャズをやりたいと思い、結局留学はやめました。

AA:コンセルヴァトワール(Conservatoire)ではなく?

吉田佐和子:ではなく、私立のエコールノルマルです。「君は入るならこのレベルからだよ、来るならおいで」と言われましたが、自分が今やりたいのはクラシックではないな、と。その後パリ留学をやめるかわりに日本でジャズをやろう、やるなら一番しんどい場所でやろう、と東京に移りました。

AA:当時パリにはどのくらい滞在しましたか。

吉田佐和子:3週間です。短いですけど、語学学校も行かず、レッスンして美術館へ行って部屋で練習して、の繰り返しでした。

AA:さて最後になりますが、4月には日本で演奏されますよね。

吉田佐和子:はい、4月末に日本に一時帰国するのですが、その際に3回演奏する機会があります。それぞれ福知山(京都府)、大阪、東京で開催するのでお近くにお住まいの方は気軽にお越しください。また、わたしのオフィシャルサイトではブログも随時更新していてパリでの生活やわたしの考えに触れてもらえると思うので、ぜひ覗いてみてください。

AA:今日はありがとうございました。


【演奏スケジュール】

  • 4/28(土) 京都/福知山
    吉田佐和子おしゃべりアフタヌーンコンサート

    遊’s
    14時開演

    クラリネット:吉田佐和子
    ピアノ:山口彩菜30184661_1783061711755283_337946409_n
  • 5/4(祝) 大阪/福島
    東日本大震災復興チャリティコンサート 未来へつなぐ『集』コンサート2018ザ・シンフォニーホール
    14時開演30118683_1783061505088637_881598600_n
  • 5/7(月) 東京/本郷三丁目
    吉田佐和子トリオライブVol.5@名曲喫茶カデンツァ19時半開演
    フルート・ピッコロ:丸田悠太
    クラリネット:吉田佐和子
    ピアノ:野口茜30007326_1783061635088624_1860742153_n

吉田佐和子オフィシャルサイト

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