フランスの国立映像学校、La Fémis (ラ・フェミス)の受験現場を追うドキュメンタリー。
この映画では、La Fémis (ラ・フェミス)の入学試験の第1次審査(筆記試験)から面接までを追っています。では、La Fémis (ラ・フェミス)とは何でしょうか。
La Fémis は、世界的に有名なフランスの国立映像学校です。
監督だけでなく、脚本、編集、音声などいくつかの分野に分かれていて、アラン・カヴァリエ、フランソワ・オゾン、アラン・レネなど、そうそうたるメンバーが卒業生に名を連ねています。
また映画だけでなくTVなど、フランスの映像業界ではLa Fémis (ラ・フェミス)出身者がとても多く活躍しています。
過去の記事「フランスの国公立美術学校の入学試験」にも書いていますが、国公立の学校では入学試験、Les Concours d’entrée、いわゆるコンクールを受験します(交換留学や外国からの受験など例外もあり)。
これは美術学校でも映画学校でも同じこと。
La Fémis (ラ・フェミス)の場合、コンクールは以下の5つの部門にわかれています。
- 一般
- インターナショナル
- 脚本
- 配給、興行
- TVシリーズ
各部門で、それぞれ第1次審査と第2次審査があります。
第1次審査はテーマに沿ったレポート集(Le dossier personnel d’enquête)の準備、制作。そして、映画分析の筆記テスト。テストは会場で全員一斉に受験します。
会場では映画を見た後に、3時間で論文制作。
映画は毎年変わり、本作『Le Concours』の中で上映されていたのは黒沢清監督の『贖罪』でした。
ちなみに、過去のレポートのテーマや批評する映画について – いわゆる過去問 – はLa Fémisのサイトに掲載されています。『贖罪』は2014年のお題だったので、このドキュメンタリー映画が2014年に撮影されたことがわかります。
第2次審査は面接。選んだ分野によって、あらかじめやっておくこと、持って行くものが違います。
その分野の専門家である複数の面接官の前で、準備したものの発表と質疑応答の様子を映画は追っています。
La Fémisは、狭き門。2016年度の結果をみると、全部門あわせての合格率が3.63%!
『Le Concours』では、この厳しい競争に挑む若者達の映画にかける夢や情熱が描かれます。同時に、どうして映画学校を選んだのか疑問に思う受験者もいて、第3者として面接試験を見るというのはとても面白い。
また、面接で、緊張で声をふるわせながら話しをする受験者もいて、とても共感できます。
受験者の他に面接官も、作品の重要な登場人物。彼らが舞台裏で交わす会話、結論を下すまでにおこなう議論や討論、選択システムなどには、La Fémisとしてのあり方はもちろん、現代のフランス事情も見え隠れします。
Claire Simonはドキュメンタリー作品だけでなくフィクションも撮るフランス人監督。
作品がカンヌ映画祭のQuinzaine des Réalisateursに選ばれるなど、フランスでは有名な監督です。
劇的なドラマがあるわけではないけれど、最後まで受験者や面接官を通して、多彩なエピソードを紡いでゆきます。
映画学校の入試を通して、フランス社会の一端を見せてしまう手法はさすが、でした。
もしLa Fémisだけでなく、フランス留学などにも興味があったら、こちらの記事もご参考までに、どうぞ。
作品名:LE CONCOURS
監督:Claire Simon
製作:フランス
製作年:2016
上映時間:119分