「写狂老人A 17.5.25で77齢 後期高齢写」/ 荒木経惟

写真を通して感じる、写真家の生き様

己 六才より物の形状を写の癖ありて 半百の此より数々画図を顕すといえども 七十年前画く所は実に取るに足るものなし
七十三才にして稍(やや)禽獣虫魚の骨格草木の出生を悟し得たり
故に八十六才にしては益々進み 九十才にして猶(なお)其(その)奥意を極め 一百歳にして正に神妙ならんか 百有十歳にしては一点一格にして生るがごとくならん
願わくは長寿の君子 予言の妄ならざるを見たまふべし

とは、画狂人と名乗った葛飾北斎の言葉。「写狂老人」と聞くと北斎を思い浮かべますし、展覧会を観た後もやはり芸術家として北斎との共通点があるように思えてりません。生き様、年齢を重ねても衰えない情熱やエネルギーがそういう印象を与えるのでしょうか。

この個展には合計で836点ほどの写真が展示されていて、ひとつひとつを丁寧に見てゆくと写真家が日々どんな生活をし、どんな瞬間にシャッターを切ろうと思ったのかが伝わってきます。食べたもの、タクシーでの移動、ヌード、車窓から眺める人々、看板、新聞記事etc 後期高齢写とタイトルにあるように、新聞記事はボブ・ディランの文学賞受賞、A.ワイダ死去、皇后様82歳に、など文化・高齢・死などの内容。右目視力の喪失など健康問題と向き合いながら、自らの加齢をどんどん作品に取り込んでゆく彼の姿勢や作品群は、息が止まりそうなほどのエネルギーと情、そして魅力にあふれています。同時に「今日はおいしいラーメンとぎょうざを食べよう」とか「イナヅマ級の男性力」という広告や看板に目がいくところなど、こちらもくすっとしてしまうようなユーモアがあります。ありふれた言葉ですが、写真を通して浮かび上がる荒木経惟は『かっこいい』のです。

愛猫チロ、亡くなった妻など独特の死生観で写真を撮り続ける、写真家・荒木経惟は、フランスでももちろんとても有名で彼の作品は高い評価を得ています。間違いなく日本が誇る現代写真家の1人であり、もっともっと作品を見続けていたい、目が離せない芸術家です。


荒木経惟 「写狂老人A 17.5.25で77齢 後期高齢写」
タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルムにて
2017年5月25日(木) – 7月1日(土)

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