秘境の東京、そこで生えている/佐藤直樹個展

東京の真ん中、旧中学校で増殖を続ける植物のドローイング

植物は音でコミュニケートするそう。バイオアコースティックの分野ではいろいろと研究がされていて、例えば植物は周波数に反応する、とか、干ばつや外敵など己の生存に関わる情報を共有する、など驚くべき未知の世界が植物界には存在するようです。

アーツ千代田3331で開催中の『秘境の東京、そこで生えている』では、木炭で描かれた植物が展示会場の壁をにょきにょきと、あるいはすくすくと伝い広がって、観る者を取り囲みます。それは圧巻で、植物が発する音が聞こえてきそうなほど。

一体どんな周波数を感知して伸びるのか、アーティストによって描かれる植物は今でも成長し続けています。壁一面に広がる植物で思い出すのは、オランジュリー美術館にあるモネの睡蓮。ただモネの睡蓮は時間の中に完全に閉じ込められ、成長することはありません。対して佐藤直樹の作品は、現代の東京という植物にとっての秘境で、生育し変化を続けているのです。

秘境の東京2

昔から木や植物は、モネをはじめ多くのアーティストを惹き付けるテーマです。17世紀のオランダにおける静物画から、現代におけるGiuseppe Penone やJacques Vieilleまで、表現方法や関心のあり方は違っても作品の中に植物がいる。なぜ植物なのか。以下に佐藤直樹の「作家のことば」を紹介します。

2010年から2011年にかけて、荻窪を歩き、目についた建物を描いた。そうしたら、廃墟の街みたいになってしまった。そのあと地震があって、植物を眺めるようになっていた。植物は何を考えているのだろう。描いて描いて描きまくったら少しは何かわかるようになるのだろうか。少しも何もわからなかったとしても、わかりたい気持ちが高まっているのだから、なんとかしなければならない。[以下略]

“NAOKI drawings @ sagacho archives”展(佐賀町アーカイブ)資料より抜粋

私たちの想像を超えた植物のコミュニケーション力が科学的に明らかになりつつある現在、植物は何も考えていない、と果たして言い切れるだろうか。アーティストの『植物は何を考えているのか』という疑問は、単純明快、無垢なようでいて、実はアートの本質をついているような気がするのです。それはつまり、アートに『絶対』は存在しない、ということ。日々の暮らしにおいて固定観念で決めつけてしまう物事に対して、本当にそうだろうか、と疑問を投げかけ、視点を変えてみるということ。

この疑問こそが『秘境の東京、そこで生えている』でアーティストが創出する周波数であり、植物たちはそれに共鳴して成長しているように思えます。
もちろんこの圧倒的な大作は、アーティストの表現への衝動もそのまま体現していて、観る者に強く訴える展示となっています。Dessin, fusain, Naoki Tanaka_2


佐藤直樹個展 「秘境の東京、そこで生えている」
アーツ千代田3331にて 2017年6月11日まで
アーツ千代田3331のサイトはこちら
個展のサイトはこちら

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