『Yourself and Yours』(監督: Hong Sang-Soo)レビュー

最新作でも期待を裏切らないホン・サンス ワールド

Youngsooの彼女はお酒が大好き。あまり飲むと「危ない」ので、量を制限する約束をしている。ところが友達から、彼女がGoldstarというバーでよく他の男と飲んでいる、と聞く。このへんに住んでる連中はみんな知っている、と。不安に思うYoungsooは、彼女のMinjungを問いつめる。彼女は「飲んでないって言ってるでしょ、どうして信じられないの?」と逆切れ。挙げ句、「しばらく距離を置きましょう」と言って去る。Minjungに夢中なYoungsooは失意の日々を送るが、対するMinjungはGoldstarで気兼ねなくお酒を口にする。2人の関係の行方は。

真っ暗なスクリーンに手書きハングルでクレジットが入ると、Hong Sang-Soo(ホン・サンス)ワールドの始まり。ユーモラスで気のきいた会話、魅力的な男女。人物へのMr.ビーンを思わせる急激なズーム撮影。役柄として登場する、自分の分身かのような映画監督。ストーリーは違っても、毎回安心してじっくり鑑賞できるのは、彼独特のスタイルが繰り返されるからかも。

監督にとっての大きなテーマは、「愛」。劇中でYoungsooが自分にとっていかに「愛」が大切かを語るシーンがあります。ただ、Hong Sang-Soo監督は、主題に距離を置いて冷静に見つめているような気がします。

それは彼が描く女性にも言えることで、例えばMinjungという女性。彼女は酒好きで彼氏のYoungsooによれば無邪気、という設定です。が、お酒を1人で飲むシーンはなく、いつも男性が一緒。そして、男性達から「君みたいな綺麗な人には、会ったことがない」というように賞賛されると、「本当?」「実は私最近モテ期みたい・・・」って具合にまんざらでもない。むしろお酒ではなく賞賛に酔っているように見えるし、そのせいで禁酒できないのではないかとも思わせる。Youngsooが思うほど、無邪気なんだろうか、と。またYoungsooも恋は盲目を地でいくタイプ。彼女かわいさに、結局言いなりになってしまう、いわゆるヘタレ。お酒と共に男女が繰り広げる駆け引きを演出する監督の観察眼は、かなり冷静で客観的と言えます。それでいて各キャラクターにミステリアスであいまいな部分を残し、ユーモアで包んでしまう手法がHong Sang-Soo監督作品の魅力のひとつではないでしょうか。

Minjungは一緒にお酒を飲んだ相手の男性に後日ばったり遭遇しても、知らぬ存ぜぬ。果たしてそれが本当なのか、演技なのかはわかりません。Hong Sang-Soo監督の目線は、我々が街中でカップルを観察する目線、いわゆる人物ウォッチング。だから「事実」は誰にもわからないのだと思います。

そしてエンディングは真っ暗なスクリーンに手書きハングルのクレジット。Hong Sang-Sooワールドが幕を閉じます。


作品名:Yourself and Yours
監督:Hong Sang-Soo(ホン・サンス)
出演者: Kim Ju-Hyeok, Lee Yoo-Young 他
製作:大韓民国
製作年:2016
上映時間:86分

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

%s と連携中