HARMONIUM / 『淵に立つ』(監督:深田晃司)レビュー

第69回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門審査賞受賞作品がフランスで公開中

よそよそしくて距離がある夫婦。妻や娘との会話でも「そうか。」しか言わない夫(父)。あやうさの上に成立する家族は、ある男の登場で揺さぶられ始める。妻に隠し事がある夫(利雄)は、妻が別の理由で罪悪感を抱えた時に、「これで家族になったんだ」という。罪悪感の共有と自己満足な許容。それが夫にとっての、家族の絆。そのせいで犠牲にしたものはあまりに大きく、妻は夫の考えを否定する。そしてその先に待っているのは・・・。

深田晃司監督はこの作品で、家族とは何かを問うと同時に人間関係のもろさや危うさも呈示します。毎日顔を合わせていても、本当に向き合っているのかどうか。それは左右対称に人物を配置して向き合わせるショットで表現されます。食事中の家族、事務所で机に向かう夫婦、工場で友人の八坂と向き合って座る利雄、同じ場所で八坂の息子と向き合って座る利雄。目の前に座っていても、果たしてどこまでお互いについて知っているのか。視覚的には安定した構図なはずなのに、なぜか不安に駆られます。

俳優陣の抑揚ある演技も素晴らしく、淡々とした利雄が公園で気が動転しているシーン、八坂の存在に揺れる妻の一瞬の隙、生真面目で一見無害に見える八坂が河原で利雄に牙をむくシーン。一瞬しか見せない人の弱さや感情の高まりが、登場人物の人生を変え、作品をひきしめる役割も担っているのです。

第69回カンヌ国際映画祭で「ある視点」部門の審査員賞を受賞した本作のポスト・プロダクションは、フランスで行われたようです。そして現在フランスで劇場公開されていますが、監督の家族に対する問いをフランス人はどう受け止めるのでしょうか。


作品名:淵に立つ
監督:深田晃司
出演者:浅野忠信、筒井真理子、太賀 他
製作:日本、フランス
製作年:2016
上映時間:119分

公式サイト:http://fuchi-movie.com/

 

 

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